ものづくり 日本の心

これからの日本のものづくりを見据えるために、過去の出来事やその成り立ちに関する情報を提供するコラム。
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梶文彦の「ものづくり 日本の心」(11)|第一章「勤勉」は近代産業とともにやってきた 〜応用に長けた生まれついての職人たち〜

kaji011こんな万博の状態を見て、欧米の産業人やマスコミは驚きました。

開幕前には、イギリス・パビリオンの人気が高く、自国開催もあって観客が殺到するだろう、続いてフランス、ドイツなどのパビリオンに観客が集まり、アメリカは目新しいものはあっても質的にはイギリスには及ばないと予想されていました。

ところが、開けてみれば最初こそ低調だったものの、アメリカの人気が尻上がりに高くなっていきます。出品された機械類も、新しく開発された専用機などがたくさん出品されていて、目新しさ、新規性、開発意欲という点で観客の強い関心を集めたのです。

会期が進むにしたがってアメリカ人気は急上昇します。予想していなかった事態に、ヨーロッパ各国の産業人やマスコミはあわてますが、実は、こうした状況は、一部の専門家の間では予想されたことでもあったのです。

というのは、1776年の独立いらい、アメリカは活気のある新興国としてヨーロッパでも注目の的になっていて、多くの人たちがアメリカに派遣され、そのレポートがマスコミに登場していました。

技術力についても、すでに1800年ころからヨーロッパで知られるようになり、多くの新聞や雑誌がアメリカの産業事情をレポートしていました。冒頭でご紹介した4つは、そのころにヨーロッパで発表されたアメリカレポートや書籍から抜粋したものです。

「アメリカではヨーロッパの発明は巧みに実用化される。そして、ヨーロッパの発明はそこでは完成された後、驚嘆されるほどに国の必要に応用される。そこでは人々は勤勉であるが、科学と産業とを研究しない。そこには優秀な労働者たちはみつかるが、発明者たちはほとんどいない」(『アメリカ職人の仕事史』)

これは、1835五年に出版されたフランス人貴族のトクヴィルによる『アメリカのデモクラシー』(邦訳はワイド版岩波文庫・松本礼二/訳)からの一節です。技能はあるが、技術はない。課題は研究開発にある、と書かれています。まるで、日本の産業界が一時期、世界から言われたことばそのものではありませんか。

「アメリカ人は生まれついての職人である。マサチューセッツやコネチカットで、機械や道具を一つも考案したことのない働き手は存在しない」(同)というのは、フランス人で経済学者ミシェル・シュヴァリエが、1834,5年に政府から鉄道敷設の任を与えられてアメリカに滞在し、各地を回った後に書いたレポートです。庶民の生活水準がフランスよりずっと高く、すべての人が活気に満ちて働いていることに強い感銘を受けたようで、彼は技能者としてのアメリカ人を高く評価しました。

「職業が喜びを構成し勤労が楽しみをもたらしている点で、この国の住民に勝る人々はおそらく世界にいない」、「アメリカの職人は自分の仕事を習ったと同じようにはやらない。常に改良をほどこす。仕事を達成するためと価格をさげるための両面で、いつも何か新しい工夫をこらしている」(同)。

この二つは、オーストリアからアメリカに移住して「『アメリカ人――道徳、社会、政治における諸関係』(1837年)を表したフランシス・J・グルントの文章です。

アメリカでは、この段階ですでにコストダウンを意識して生産、開発・改良が行われていたことも書かれています。

当時のアメリカは、習い覚えた技を持った多くの移民が、各国から手ぶらでやってきて、よーいドンで、開発競争を繰り広げた国だったわけです。

梶文彦 写真

梶文彦氏執筆による、コラム「ものづくり 日本の心」です。
梶氏は、長い期間にわたりものづくり企業の国内外でのコンサルティングに携わり、日本製造業を応援しています。
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