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ものづくり 日本の心

これからの日本のものづくりを見据えるために、過去の出来事やその成り立ちに関する情報を提供するコラム。
発想を変えたい時やちょっとした仕事の合間にご覧ください。

「日本のものづくりは、世界の財産である」(71)|第六章 勤勉革命と能力主義の萌芽 〜仕事の報酬〜

図版原稿-6.016
幕末のことです。
あるとき、オランダ人がアメリカの船を雇って、出島から銅および樟脳を積んで出帆しました。そして、そのうちの一艘が港内の岩礁に衝突して、沈没してしまいました。

乗組員たちはなんとかボートで海岸にたどり着きましたが、積み荷は船中です。オランダ商館やアメリカ人乗組員、長崎当局が集まって、沈んだ艦船の引き揚げ方法について協議を重ね、引ぎ揚げる努力がなされましたが、うまくいきませんでした。

途方に暮れていると、きえもんと名乗る一人の漁夫がやってきて、作業費を支払ってくれるならば、同船を引き揚げようと持ち掛けました。周囲は彼の大ボラを嘲笑しましたが、他に方法も考えられなかったので、きえもんに任せることにしたそうです。

きえもんは、干潮の時を見計らって座礁した船の両側へ、小型の帆船15、6隻を並べ、ロープで繋がせました。そして沈没船の艫にしっかりと結びつけると、潮の満ちてくるのを待ち、満潮の瞬間に、全部の小舟に帆を張ることを命じたそうです。沈没船は小舟の浮力で浮き上がり、海岸に着岸しました。そして、海岸で積荷が回収され、沈没船は修繕されたそうです。

この行為できえもんは手厚い報酬を貰ったと言われていますが、その報酬は、帯刀を許されることと、オランダの帽子と2つのオランダのキセルをもらうことだったそうです。

ペリーは、もし事情が逆で、オランダ人、あるいはアメリカ人が日本人のために船を引き揚げたのであれば、2本の刀とオランダ帽、2つのキセルでは、このような価値ある働きに対する報償としては、はなはだ不十分であることが、早速日本人に告げられたであろうと書いています。

きえもんにとって「帯刀を許されること」の価値がどのくらい大きかったのか、外国人には想像もできないでしょうが、それにしても、オランダの帽子とキセルとは、いかに欲のないことでしょうか。 

また、1878年に来日し、6月から9月まで、日本人の通訳兼従者を伴って東北から北海道へ旅行をした英国人のイザベラ・バードも、『日本奥地紀行2』(平凡社東洋文庫)のなかで、旅の間に各地で「無報酬」で受けた日本人の親切さに感嘆しています。

「その日の旅程を終えて宿に着いたとき、馬の革帯がひとつなくなっていた。もう暗くなっていたのに、その男(従者)はそれを探しに一里も引き返し、私が何銭か与えようとしたのを、目的地まですべての物をきちんと届けるのが白分の責任だと言って拒んだ。」

「新潟県と山形県境の悲惨な山中の村で、みっともない恰好の女は、休息した場所でふつう置いてゆくことになっている2、3銭を断固として受けとらなかった。私がお茶ではなく水を飲んだからというのだ。私が無理に金を渡すと、彼女はそれを伊藤(同行の通訳)に返した」

また、内国運送会社の継立所では、バードが暑がっていることに気が付くと、女性たちがウチワで1時間も無償であおいでくれた、・・・などを紹介しています。

そして、バードは、
「ヨーロッパの国の多くや、ところによってはたしかにわが国でも、女性が外国の衣裳でひとり旅をすれば、現実の危険はないとしても、無礼や侮辱にあったり、金をぼられたりするものだが、私は(日本では)一度たりと無礼な目に逢わなかったし、法外な料金をふっかけられたこともない」。

梶文彦 写真

梶文彦氏執筆による、コラム「ものづくり 日本の心」です。

梶氏は、長い期間にわたりものづくり企業の国内外でのコンサルティングに携わり、日本製造業を応援しています。

写真撮影:谷口弘幸


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