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ものづくり 日本の心

これからの日本のものづくりを見据えるために、過去の出来事やその成り立ちに関する情報を提供するコラム。
発想を変えたい時やちょっとした仕事の合間にご覧ください。

「日本のものづくりは、世界の財産である」(57)|第五章 科学より技術に向かう職人たち 〜第一線で展開される実践的な改良〜

図版原稿-5.008
この千歯こきの話から、伊勢講は庶民の楽しみとして古くから行われただけでなく、農機具や農業技術を各地に伝える重要な機会にもなっていたことが分かります。

これは、逆にいえば、いかに農民たちが、優れた栽培法や効率的な作業方法、道具を求めていたかを物語るものです。そして千歯こきも、各地でまた改良が加えられて伝播していきました。

『農具便利論』には、改良され使われている例として、さまざまな鍬の図が紹介されています。紹介された先でまたその土地に合わせて工夫・改良が加えられたもので、柔らかい土壌用、固い土壌用、湿地用、畑用、田んぼ用、粗おこし用、畝おこし用……などその形は、じつにさまざまです。

とはいえ、同書には、たびたび、「農夫は古い習慣に固執してなかなか新しい道具を使いたがらない。もっと柔軟な発想で積極的に新しい道具を使用するべきだ」といった意見も紹介されています。積極的に工夫を加えて新しい道具を導入しようとする人たちがいる一方で、従来のやり方を変えようとしない人たちもいることが分かりますが、このあたり、いつの時代にも変わらないようです。

明治維新以降、新しい動力源の開発で農機具は大きく変化しました。しかし、コメ作りの基本的な知識やノウハウに関していえば、コメの栽培に関する基本的な技術は江戸時代に完成され、以降ほとんど大きな変化はないと言われています。

私たちにとって、江戸時代の農業と言えば、どうしても人手作業に頼り、抑圧された農民たちによる発展性のない職業というイメージがあります。映画や小説などで描かれる江戸時代の農民は、そういう人たちとして描かれていますが、実際はどうだったのでしょうか。

全国を股にかけて教えて歩く指導者がいて、また、伊勢詣りなどを通じて全国規模の情報交流が行われ、改良種の種子もかなりオープンに伝播していたようです。また、農業書も流通し、実践的な栽培技術の改良が進められていました。

農業の専門家に聞くと、米作の技術は江戸時代でほぼ完成されていたそうです。そんな話を聞くと、江戸時代の農民や、当時暮らしていた人々のイメージが大きく変わって見えるではありませんか。

いかにも日本的なのは、その仕組みです。農夫たちは庄屋を核として、第一線で田畑の管理と栽培を行い、米作の実践的な生産性向上の努力を続けていましたが、他方で、幕府や藩は、米作に代表される農業生産によって経済が成り立っているにもかかわらず、生産性を高めるための研究面での支援をあまり行ってきませんでした。

言い換えれば、江戸時代を通じて、科学としての農業はほとんど扱われず、もっぱら道具や栽培法などのコメ生産の実践技術的な改良が続けられてきたということです。

つまり、米作を中心とした農業は、科学として研究されずに、道具や栽培技術の実践的な実験と研究が農民自身によって行われてきたわけです。

梶文彦 写真

梶文彦氏執筆による、コラム「ものづくり 日本の心」です。

梶氏は、長い期間にわたりものづくり企業の国内外でのコンサルティングに携わり、日本製造業を応援しています。

写真撮影:谷口弘幸


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