旭化成インタビューその3
2014 ものづくり総合大会(2014年2月19日~21日)にあたり行った、開催前インタビューです。
フロントローディングのメリットとは?
安部
商品開発からくる要求仕様が場合によっては若干曖昧で定性的ということもあり得ますよね?
後藤
品質は、かなりしっかり抑え込んでおられると思うんですが、実際に作っていく品質管理上、品質がちゃんととれるのかということと、あとは能力ですね。
それだけの生産量をしっかり確保できるのか、稼働率や収率が甘くないか。確認が難しいケースもありますので、よく議論することがあります。
安部
計画と現実のギャップを埋めて、お客さんに商品をどう届けるかというリアルなところですね。
後藤
この期間にこれだけの開発でギャップを埋めるという議論をさせていただくことが多いですね。
場合によっては、開発計画を少し練り直して、将来のコストをもっと下げるために、設備の中に将来的技術を盛り込んでプラントを作ります。
運転しながら機能性を確かめ、機能したらコストはここまで落ちるので・・・という開発が見ながら走っていくような提案もさせていただきます。
安部
その、生産技術側からの考慮というか・・配慮ですね。上流では気づかないところに手をさしのべてより現実にしやすくする。
あるいは先行で実験をしておくなど、いまの組織になってやりやすくなったということですね。
後藤
そうですね、そこの話がしやすくなったと思います。
以前は、いわば頂いた仕事をやっていく形で、どうしても「次にこの仕事をやるために、ここまでで終わらせよう」という感じがありました。
「一番いい形になるには・・」という話を延々するのって煙たがられる場合もありましたしね。
安部
煙たがるのは、どちらがですか?
後藤
事業会社からみるとエンジ二アリング会社は子会社のようなポジションなので、ややもすると「子会社は、言うことを聞いてそれをやってくれ」みたいなことにもなっていたと聞いています。
いい解釈をすれば「責任は、自分たちにあるから君たちは言われたことだけをやればいい」と強烈に事業会社が思っていればそうなるかもしれませんね。一緒にやっていくというよりも、自分たちがやるんだ、ということだったのかもしれません。
安部
極端に言えば、委託先だと。言われた通りやってくれればいいんだと。
後藤
そうですね。
いまは、トップから言われるのは、我々が考えるべきは「当社にとって、一番いいことは何だ」ってことだろうと。それを、もういっぺん議論してこいと。
それで、本当に一番いいところにいけるかどうかわからないけども、モアベターは間違いなく出してこられます。最初から全体観の話がでていれば、スピード感も持てますし、将来にむけて、隠し玉をいれておこうなんて話がいっぱいできますよ。
安部
フロントローディングですね。
後藤
そうですね。後追いだとどうしても設備がいびつになりますから。
それから、計画を把握していればどこがネック工程かは予めわかっています。将来、増産するとわかっていれば、少々余裕を入れた対応をしておくことができます。レイアウトやスペースも同様です。
一般的にはコストを削るために、「こんなに要るのか」という議論になりがちですが、将来を見据えて合意しておけば、後々苦労しないで済むんですね。
以前は会社のトップの議論を経た結果を受けるかたちでしたが、いまは全体の議論の場に我々も入れますので、将来を見据えた手を打つことができるようになりました。その意味では、すごく動きやすくなりました。
安部
上流段階から一緒に議論し、同じチームだという感覚ですね。
後藤
ええ。もともとはそうやってたんですよ。元に戻っていってるのかもしれないです。
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